五百羅漢寺(東京)・キャッチコピーな仏像

数年ぶりに目黒区にある五百羅漢寺を参拝してきました。(⇒五百羅漢寺HPはコチラ)



通常は仏画で描かれたり、小さな石仏などで造られることが多い五百羅漢像。
ところがこちらのお寺では、全国的にも珍しい、等身大サイズの像を拝することができるのです。



一人一人の羅漢様の横には、それぞれの像に関する説明の言葉が添えられています。
何より気になるのは、その実に多彩なフレーズの数々。
「理想を高く持つ」
「自分自身を静かに見つめる」
「何事も途中でやめない」
「自分の心を見てごらん」
「一期一会」
羅漢様の説明というより、だんだん書いた人の教訓やつぶやきのレベルに…(笑)。
何か面白い言葉がないかと、いつも必死になって探してしまいます。

287体の羅漢像は、本堂の釈迦如来像を囲むグループと、収蔵庫のグループの2つに分れて安置されています。
たぶん数が多すぎて本堂には入りきらなかったのでしょう。
昔は皆さん一緒のお堂にいらっしゃったのかしら…?
さぞかし荘厳な眺めだったのでしょうね。

数で圧倒的な五百羅漢ばかりに目が行きがちですが、本尊のお釈迦様はじめ、文殊・普賢菩薩様も立派な像です。
これらの仏像は、元禄時代、松雲元慶という僧侶によって十数年の歳月をかけて造られました。
一人でこれだけの数の仏像を造り上げたということに、いつも心から圧倒されます。
確固たる信仰心や信念がないと、決して成し遂げられなかったはずです。

この五百羅漢寺は、江戸の人々に「本所のらかんさん」と呼ばれて信仰されていました。
らかんさん、という親しみやすさこそが一番の魅力なのでしょうね。

2010.5.29
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伊藤若冲の石仏

先日、伊藤若冲アナザーワールド展に行ってから、若冲がマイブームに。
ネットで本を買い、毎日うっとりしながら、ページをめくっています(影響されやすい…)。


…と、ひとつ気になる内容がありました。
この本によれば、京都の石峯寺には若冲が下絵を書いた石仏があるとのこと。
若冲に限らず、著名な画家が造像に携わった石仏というのを初めて聞きました。

実は最近、仏像のみならず、野の石仏にもトキめくようになった私。(我ながら収拾がつかなくなってきた…(汗))
う〜ん、ぜひ行きたい!
石峯寺は、伏見稲荷大社の近くにあるそうです。
このあたりは何度か訪れたことがあるのに、石仏のことは全く知りませんでした。

今年は奈良1300年祭。
秋には近畿へ旅行に行く予定なので、何とかスケジュールを調整して、ぜひとも若冲の石仏をお会いしに行きたいなあ…。
楽しみです

伊藤若冲 アナザーワールド展

千葉市美術館で開催されている「伊藤若冲 アナザーワールド展」に行ってきました。(⇒HPはこちら)
いつも仏像ばかりに関心が向いていて、それ以外の分野はほとんど詳しくないのですが、何せこちらの美術館は自宅から徒歩圏内。せっかくなので鑑賞してきました。
著名な画家の特別展ということで、会場内はかつてないほどの混雑ぶりでした。
千葉市美術館の最高入場者数を記録したそうです。

特別展では、洗練された構図が素晴らしい水墨画から、色彩鮮やかな屏風絵まで、実に多彩な作品が並んでおり、日本画に全く詳しくない私でも、十分に楽しめる展示となっていました。
そして何より一番印象的だったのは、果蔬涅槃図。

二股大根を釈迦に見立てた釈迦涅槃図であり、釈迦を取りまく弟子たちや動物が全て野菜や果物で表現されているという、奇想天外な仏画(?)なのです。
そのラインナップたるや、カブ、ナス、レンコン、サトイモ…、まるで八百屋さんがそこに現れたような賑やかさ。
なんでも伊藤若冲の実家は青物問屋だったそうで、それも作品に影響を与えているのではないかとのことでした。
戯画の一種だと考えられているようですが、不思議と大らかな温かさを感じるような絵で、しばし立ち止まって見入ってしまいました。

会期中、ぜひまた行きたいなあ…。

2010.5.22

長命寺(東京)・石仏ワンダーランド



先日、練馬区にある長命寺の十一面観音御開帳に行ってきました。



こちらは山門にいらっしゃる多聞天。
すごい眼力!



ご本尊は素朴な感じのする、とても素敵な観音様でした。
せっかくなので、参拝のあと境内を散策することに。



広大な境内には至る所にに石仏が並んでいました。
実際に訪れるまで知らなかったのですが、この長命寺は、石仏が沢山あることで有名なお寺のようです。



こちらは閻魔をはじめとする十王像。
石仏の十王像を見たのは、おそらく今回が初めてです。
とっても恐いはずの閻魔様も、石仏になると何だか可愛らしく見えます。
丸い背中にどことなく哀愁を感じますね

2010.5.16

新井薬師(東京)・薬師如来&如意輪観観音御開帳

東京都中野区にある新井薬師の本尊は、二仏一体の像であり、表側が薬師如来、裏側が如意輪観音になっているという、大変珍しい仏様です。
そして、そのご本尊が今年12年ぶりに開帳されています。
(⇒新井薬師HPはこちら)

二仏一体とは、どのようなお姿なのかしら?
高鳴る期待を胸に、新井薬師を参拝してきました。



12年に一度の御開帳だけあって、境内は参拝客で賑わっていました。
本堂へ入り、五色の糸が伸びている方角を覗きこむと…。



「えっ?」
思わず声をあげてしまうほどに、ご本尊は小さな像だったのです。
像高約5.5cm。
お寺の方に伺ったところ、黒っぽい像は鋳物で出来ているそうですが、詳しい材質は不明とのことでした。

あまりに小さく、詳細はよくわからなかったものの、厨子の手前にある御前立ち像と同じ形をしていることから、だいたいの想像はつきました。
円形の光背を背にして、薬師如来が座っていらっしゃるようです。
残念ながら表側しか見ることができなかったので、裏側の如意輪観音の姿は全くわかりませんでした。
決して全てを見ることができないからこそ、神秘的で、より深い信仰を集めてきたのかもしれませんね。

2010.5.16

増上寺(東京)・黒本尊御開帳



お寺の後ろに東京タワー。
そんな不思議な光景を味わえるのが、港区にある増上寺です。
以前にも何度か訪れたことがあるお寺ですが、5月15日は特別な日ということで、久しぶりに参拝してきました。
年に数回しかない、黒本尊と呼ばれる秘仏を拝することができる日なのです。



増上寺へは都営線大門駅から歩いてすぐ。
立派な山門は江戸初期の建築物で、国の重要文化財の指定を受けています。



こちらは本堂の本尊である阿弥陀如来。
都の文化財に指定されており、柔和なお顔だちで、優美な雰囲気が漂っています。



黒本尊は、こちらのお堂で開帳されていました。
黒本尊と呼ばれているだけあって、たしかに真っ黒な阿弥陀如来です。
像高はおそらく70〜80cmほど。
鼻筋が通って、涼しげな眼差しをなさっており、本堂の阿弥陀様とはかなり異なった印象を受けました。

お寺の方のお話によると、この阿弥陀様はもともと黒かったわけではなく、かつて金箔に覆われていたものが剥がれ落ち、お線香などの煙で燻されて黒くなっていったということでした。
徳川家康の念持仏であったと伝えられているそうです。



境内を歩いていると、お地蔵様がたくさん並んでいる一画がありました。
風車が取り付けられており、風を受けてクルクルと回転しています。
なんとも幻想的な光景でした。

2010.5.15

神野寺(千葉)・トラ脱走騒動の古刹(2)

本堂を出ると、お堂の右奥に宝物館があるのに気がつきました。



せっかくここまで来たのだから、と入ってみることにしたのですが…。
その収蔵品の数々に絶句!

トラの毛皮(逃げたトラかどうかは不明)、野鳥やあらゆる動物の剥製(しかも剥製にまじってトラの置物が紛れ込んでたり)、さらには伝・左甚五郎作という白蛇の彫刻までが所狭しと並んでいたのです。

       

他にも、兵馬俑(確実にレプリカと思われますが、そのあたりについては全く触れられておらず)、唐三彩の人形(確実に土産ものと思われますが、やはり特にその旨は触れられておらず)など、ガラスケースの中に盛り沢山です。

タスマニアタイガー、完全に木彫りだわ…。

       

通常はガッカリするところなのかもしれませんが、私的にはトラ脱走事件を起こした当時のご住職の意気込みを体感できた気がして、何だか嬉しくなってしまいました(笑)。
形はどうであれ、トラが本当に好きだったんだろうなあ。
しかし、いくらなんでもこの展示品で入場料500円は高すぎるんじゃ…。

収蔵品を十二分に堪能したあと、県の天然記念物に指定されている桑の木があるという庭園に向かいました。
庭園の門は室町時代に建てられたもので、国の重要文化財とのこと。
このあたりは古刹の貫禄を感じますね。



「ワン!ワンワンッ!!」
庭に足を踏み入れた瞬間、どこからともなく真っ黒な犬が突然現れ、しきりに吼えてぐるぐると走り回り、部外者である私を牽制しだしたのです。
怖くて全く前へ進めません。

するとお寺の方がいらっしゃって、
「コラァー!あっちへ行け!あっちへ行けったら!さっ、今のうちに入って桑の木を見てきてください!」と走り回って犬を追い払ってくださったのですが、犬は隅の方でグルグルと唸っており、怖すぎて生きた心地がしませんでした(笑)。
あの黒犬はお寺の飼い犬だったのか、住み着いてしまった野良犬だったのか、未だに不明です。

命からがら庭園を抜け出し、本堂周辺を歩いていると、奥に飯縄権現を祀ったお堂がありました。
飯縄権現といえば、高尾山薬王院のご本尊としても知られている、修験道の神様。
この神野山でも山岳信仰が盛んだったことが窺い知れ、非常に興味深くなりました。

お腹いっぱいになりすぎるほど盛り沢山だった神野寺を離れ、同じ鹿野山にある仏母寺を訪れました。
境内からは九十九谷と呼ばれる、房総の丘陵地帯が一望できます。



お寺はマザー牧場と隣接しており、羊の群れが見えました。



最後に牧歌的な気分を味わい、鹿野山を後にしたのでした。

2010.5.3

神野寺(千葉)・トラ脱走騒動の古刹(1)

房総の人気観光スポットであるマザー牧場は、九十九谷と呼ばれる房総丘陵に位置しています。
そしてそのマザー牧場の近く、鹿野山という山の奥深いところに、かつてトラ脱走事件で世間を騒然とさせた神野寺というお寺があります。

房総育ちの私は、幼少時からこの珍事件のことをよく聞かされていました。
事件の詳細はコチラ

1979年当時、神野寺の住職はトラを数頭飼っていたのですが(これだけでも相当スゴイ)、なんと不注意で2頭を逃がしてしまったのです。
そのうちの1頭が3週間ほど逃げ回ったため、住民に戒厳令がしかれ、街にはパトロール隊が出動。
地元は大混乱に陥りました。
この騒動は、見つかったトラが射殺されるということで終結するのですが(人間に振り回され、トラも大迷惑だったでしょう)、その後もずっと地元の人々の間で語り継がれることとなったのでした。

かくいう私も最近まで、神野寺のイメージ=トラ脱走事件、くらいしか持っていませんでした。
本尊が今年12年ぶりに開帳されるという情報を得るまでは…。
しかもその本尊は、薬師如来と軍荼利明王の二尊という、非常に珍しい組み合わせとのこと。
仏像ファンの血が騒ぎます。
 
というわけで、GW真っ只中の5月3日、鹿野山まで行ってきました。

晴天の下、国道127号線を車で気持ちよく南下します。
高速道路が館山までつながったので、国道も以前とくらべるとずっとスムーズ。
…と思いきや、マザー牧場へ向かう車の大渋滞が、鹿野山のふもとから続いていました。
必死の思いで渋滞を潜り抜け、なんとか神野寺へ。



山門は古刹の風格が漂っています。
この時点では、かつて世間を賑わせた珍寺の気配など微塵も感じませんでした。
門をくぐり、五色の幕で覆われたお堂へ足早に入ると、厨子の中に3m近い薬師如来と軍荼利明王がいらっしゃるのが目に飛び込んできました。



薬師如来は鋭い目をなさっていて、像全体にも比較的古様な雰囲気が漂っています。
その涼しげなお顔立ちは、先日訪れた木更津・東光院の薬師様を何となく彷彿とさせました。
手を胸の前でクロスさせた軍荼利明王の方は、眉毛が太く、くっきりとしたお顔だちでした。
二尊はそれぞれ大きさも像の雰囲気もかなり異なっているので、おそらく仏師や造られた時期は全く違うのではないかと思います。
かなり個性的な尊像を拝することができ、満足しながらお堂を出ました。

…そして、この後すぐ私は思い知らされることになります。
昭和のトラ脱走騒動を引き起こした、この神野寺は、やはりただならぬ古刹であったのだと…。

(その2へ続く)

東光院(千葉)・桜井の峯薬師

木更津市にある東光院は、地元の人々から桜井の峯薬師と呼ばれて親しまれています。
今年の春、その本尊が特別開帳されるということで、GW中に木更津まで行ってきました。



東光院へのアクセスは、木更津駅からバスで15分ほど。



お堂は国道127線沿いの小高い丘の上にあります。



急な階段を登って行くと、山門に仁王様がいらっしゃいました。
ウエストが非常に細く、スレンダーですね。



寅年の特別開帳ということで、お堂は五色の幕で彩られており、厨子から外へ五色の糸が伸びています。

中へ入って目を凝らしてみると、薄暗い厨子の奥に薬師如来様がいらっしゃいました。
像高1.64m。荒彫りでカヤの寄木造。
千葉県の文化財指定を受けています。
暗いうえに距離があって細かいところまではよく見えなかったものの、鋭い眼差しをなさっていて、神秘的なお顔立ちの薬師様でした。



説明してくださった地元の方のお話によると、雑誌などで房総の美仏と紹介されたことがあるそうです。
薬師様のお隣には月光・日光菩薩、その周りを十二神将が取り囲んでいました。
ご本尊以外は江戸時代の作とのことですが、勢ぞろいした様は、なかなか見ごたえがあります。

お堂にいる間、地元の方が何人も参拝にいらっしゃっていて、外から談笑している声が絶えず聞こえていました。
この薬師様が今も地元の方々に愛され続けている存在なのだということが実感できますね。

2010.5.2

東京国立博物館・快慶の地蔵菩薩像

今日、東京国立博物館に行ってきました。
一番の目的は何と言っても「平成22年新指定国宝・重要文化財」展。
鎌倉時代の仏師、快慶の地蔵菩薩像(大阪・藤田美術館蔵)が重要文化財に指定され、東博で公開されることになったのです。
⇒写真はコチラ
像高はおそらく60cm前後。
いかにも快慶らしい、上品なお顔立ちの地蔵菩薩で、特に洗練された着衣の表現は素晴らしく、木から彫り出されたとは思えないほど軽やかでした。
美しい切金や彩色は造像当時のものだそうなので、もともとは厳重な秘仏だったのかもしれません。
上半身をわずかにひねっており、その絶妙なバランスの立ち姿に、名匠・快慶の力量が遺憾無く発揮されていました。

もう一つ印象的だったのが、高知県・養花院蔵の木造菩薩坐像。
奈良時代の作で、像高20〜30cmほどの壇像様彫刻です。
精緻な彫りが優美な雰囲気を醸し出しており、その作風から、中央で造られて高知まで運ばれた可能性が高いのではないかと思いました。

明るい場所で仏像に近づけるところなど、博物館の展示にももちろん良さはありますが、やはり私はお寺で拝する仏像が一番好きです。
いつか高知県まで行って、この菩薩様にお堂でお会いしたい。
またひとつ目標ができました

2010.5.9

鶴林寺(兵庫)・播磨の法隆寺

今回の関西旅行の最終目的地、加古川市の鶴林寺へ辿り着きました。
浄土寺から車を飛ばして何とか滑り込んだのは、受付終了時間の10分前。



まずは急いで宝物館へ。
鶴林寺参拝の第一の目的は、この宝物館にある白鳳期の聖観音を拝することでした。
(⇒お寺のHPに写真が載っています)
像高83cmで銅造。白鳳時代後期の作です。
腰を軽くひねって右腕に天衣を巻きつけ、その衣の端を左手でそっと握っており、とても可憐なお姿をなさっています。
盗人がこの観音様を潰そうとして腰を叩いたところ、像から「アイタタ…」という声がしたので、盗人が懺悔して寺へ返したという伝説が残っており、別名「あいたた観音」と呼ばれて、篤い信仰を集めてきました。



この鶴林寺は播磨の法隆寺と呼ばれる古刹で、お堂のいくつかは国宝に指定されています。
お寺の隣には大きな公園があり、沢山の子供たちが遊んで賑わっていました。

2010.4.19

浄土寺(兵庫県)・快慶の阿弥陀三尊

石龕寺から車で南へ約1時間、兵庫県小野市へ向かいました。
目的地は浄土寺。
鎌倉時代の仏師、快慶の阿弥陀三尊が祀られているお寺です。

お寺の周りには、のどかな田園風景が広がっていました。



期待に胸を膨らませ、お堂へ上がってみると、なんと入口が開いていません。
ここまで来てまさか、と絶望的になってしまいました。
団体の参拝客の方も十数人集まってきて、ちょっとした騒ぎになっています。
何とかしなければと歩きまわっていたところ、近くに塔頭と思われる寺院があり、そちらでお願いしたところ、無事に拝観できることになりました。



阿弥陀堂は、建物、本尊ともに国宝。

ご本尊を拝した感想は何よりもまず、大きい!の一言に尽きます。
阿弥陀如来の像高はなんと530cm。
脇持の観音・勢至菩薩でも371cmあります。
三尊とも金色に輝き(おそらく後補)、雲の上に乗って極楽浄土から来迎している様をあらわしており、その煌びやかなお姿は荘厳そのものでした。

また、このお寺を有名にしている理由のひとつに、お堂の構造があります。
夕暮れになると像の後ろから夕日が差し込み、まるで阿弥陀如来の後光となって見えるように設計がされているのです。
この日は天気があまりよくなかったうえ時間も早かったので、残念ながらそのような光景を目の当たりにすることはできませんでした。
それでも像の素晴らしさは十分堪能できましたし、またいつか浄土寺を訪れたいという目標にもなりました。

次はこの旅の最終目的地である加古川へ。鶴林寺です。

2010.4.19