真長寺(岐阜)・丈六の釈迦如来

岐阜市三輪に位置する真長寺。
山号は三輪山、寺伝によると大和国の三輪より三輪明神を招請し、その別当寺として栄えてきたとされています。



こちらのお寺には、珍しい丈六のお釈迦様がいらっしゃいます。



像高なんと283cm。
唐草模様を配した丸い光背も造像当時のものだそうです。
これだけ大きな像が祀られているということは、かつては巨大なお堂が立ち並ぶ大伽藍が広がっていたに違いありません。
地元の豪族が建立したとも言われていますが、相当な力を持っていたのでしょう。



横から拝した時のバランスも申し分ありません。



大きなお体に、藤原仏らしい優しいお顔立ち。
お釈迦様のお顔をじっと見つめていると、包み込んでくださるような安心感を感じました。
きっと沢山の人々が同じ気持ちを抱いてきたのでしょうね。
スポンサーサイト

横蔵寺(岐阜)・美濃の正倉院



岐阜県揖斐川町にある横蔵寺は、数多くの寺宝が残されていることから、美濃の正倉院と呼ばれている古刹です。



境内の周囲には立派な石垣が張り巡らされており、まるでお城のよう…。



伽藍は1571年に織田信長の兵火によって焼かれたため、現在のお堂は江戸時代になって再建されました。

仏像は収蔵庫に安置されており、その多くが重要文化財の指定を受けています。
中でも仁王像は、京都・大報恩寺の六観音を造ったことで知られる仏師・肥後定慶の作ということで、以前から拝するのをとても楽しみにしていました。
躍動感溢れる体躯、流麗な衣文の表現などに、定慶の卓越した力量が遺憾なく発揮されています。

特筆すべきは全国的にも珍しい、深沙大将立像です。
ほぼ等身大で、体形も人間に近いのですが、体のあちこちに蛇を巻きつけています。
丸くて大きな目、チューリップのような形の逆立った髪の毛…。
一度お会いしたら絶対に忘れることのできない、強烈なインパクトを放っていました。



そしてこの横蔵寺の名を有名にしているのが、舎利殿に安置されている即身仏。
江戸時代に即身成仏した妙心法師のお姿を直に拝することができます。
即身仏を拝したのは今回が初めてでしたが、その迫力と存在感にひたすら圧倒されるばかりでした。

2011.4.18

ブッダ展に行ってきました

東京国立博物館で行われている「手塚治虫のブッダ展」に行ってきました。
(展覧会HPはコチラ)

『ブッダ』は、仏教開祖であるお釈迦様の生涯を描いた、手塚治虫さんの名作漫画。
私も高校生の時に文庫版を読んで号泣しました。
はたして漫画と仏像の共演はいかに…?



会場では『ブッダ』のストーリーを紹介しながら、実際の仏像を展示。
一番の目玉は何と言っても、東京・深大寺の釈迦如来倚像でしょう。
普段お寺ではガラス越しの拝観のみですが、ブッダ展では直にお姿を拝することができます。
その他にも古今東西の仏像がバランス良く紹介されていました。
ただし、熱烈な『ブッダ』ファンであった私にはとても楽しめる内容でしたが、作品を読んだことがない方はピンと来ない点もあるかもしれません…。

そしてブッダ展と併せて楽しみにしていたのが、4月下旬〜5月上旬に開催されていた「平成23年度新指定重要文化財」展です(※現在は終了)。

特に岡山・大賀島寺の観音様は33年に一度の開帳とのことなので、この機会にお姿を拝することができたのはとても幸運でした。
体に対し極度に小さい下膨れのお顔。衣文は複雑でボリュームがあり、圧倒的な存在感を放っていました。
次回は是非お堂でお会いしたいものです。

これだけの尊像が初めて重文指定を受けたわけですから、まだまだ日本各地には、知名度はなくとも素晴らしい仏様が沢山いらっしゃるに違いありません。
そう考えるとワクワクしますね。

2011.5.7

美江寺(岐阜)・十一面観音御開帳

数年来憧れ続けてきた、美江寺の本尊・十一面観音の御開帳へ行ってきました。
年にたった1日、4月18日のみに開帳されるという秘仏です。



美江寺は岐阜市の市街地に位置しており、すぐそばには岐阜県庁もあります。
千年以上昔に造られた尊像が祀られていると聞いていただけに、お寺の周りの都会的な街並みはとても意外でした。

期待に胸を膨らませ、お堂の中へ。
観音様は本堂奥の収蔵庫にいらっしゃるということで、奥を覗き込んでみると…。
(お寺HPの写真はコチラ)

「わあ…っ!」
思わず声が出てしまうほどに、その観音様は可憐なお姿をなさっていました。
素朴で可愛らしいお顔、わずかにふくよかな体躯は、12〜13歳くらいの少女を思わせます。
子供から大人になりつつある、その過程を見ているようでもありました。

そして特に珍しいのは、この尊像が脱活乾漆造で作られている点。
麻布を漆で塗り固めて像を造る技法で、有名な興福寺・阿修羅像も同じ方法で造られました。
漆を大量に使うため時間と費用がかかりすぎ、奈良時代に流行した以降、やがて用いられなくなったのです。
美江寺の尊像は、地方に残されている数少ない乾漆像の一つとしても知られています。

説明してくださった方のお話では、かつてこの観音様は厳重な秘仏であったとのこと。
可憐で繊細な美しさを目の当たりにすると、厨子を閉ざして崇め続けた、昔の僧侶たちの気持ちもわかるような気がしました。

2011.4.18

願興寺(岐阜)・民衆が造ったお堂

岐阜県御嵩町にある願興寺を参拝してきました。



願興寺は創建が平安時代まで遡ると伝わる古刹で、貴重な寺宝が数多く残されていることでも知られています。



仏像はこちらの立派な収蔵庫に安置されていました。

足を踏み入れるなり、思わず絶句!
収蔵庫の中には何と二十数体もの仏像がずらりと立ち並んでいたのです。
しかもそのほとんどが国の重要文化財指定を受けています。

中でも四方を守る四天王の迫力には目を見張りました。
(写真はこちら)
像高242cmで桧の寄木造。
鎌倉仏である多聞天以外の三尊は藤原時代の作です。
全国的に見ても、これだけの大きさが揃っている四天王像は数少ないでしょう。

それから特に印象的だったのが、鎌倉期の釈迦如来坐像。
(写真はこちら)
説法印を結ぶ珍しいお釈迦様で、テレビで紹介されたこともあるのだそうです。

沢山の素晴らしい仏様たちがひしめき合う濃密な空間に、ただただ圧倒されるばかり…。



この願興寺には、素敵な言い伝えが残されています。

蟹薬師として篤い信仰を集めてきた願興寺は、兵火によって壊滅的な被害を受けてしまったため、現在の本堂は1581年に再建されました。
そしてそのお堂を再建したのは地元の民衆たちだったのです。
それゆえ建物の一部は違う木材で継ぎ接ぎされていたり、曲がりくねったりしています。
民衆たちは建設への労働力や食糧など、各々が提供できるもので助け合い、お堂を建設したのでした。

素朴な造りのお堂に、温かい信仰心を感じますよね。

2011.4.18

七寺(愛知)・玉眼の菩薩像

名古屋市中区の長福寺は、かつて壮大な七堂伽藍が建立されていたことから、七寺とも呼ばれています。



拝観のお願いをして本堂へ。
薄暗い奥に観音・勢至菩薩のお姿が浮かび上がっているのが見え、思わず息を呑みました。
(県HPの写真はコチラ)

両菩薩ともに像高は178cmで、1168年の作。
眼には玉眼をはめており、これは京都や奈良を除いては最も早い作例だそうです。
バランスの良い体躯、理知的で品のあるお顔。
勢至菩薩の光背も見事でした。

「ご本尊の阿弥陀様は、戦争の空襲で焼かれてしまったんですよ」
お寺の方が仰いました。

七寺は名古屋市の中心部にあるため、この界隈は空襲の標的とされたそうです。
巨大な丈六仏であったご本尊はどうしても運び出すことができず、かろうじて脇侍の両菩薩だけお守りすることができたのでした。
かつて阿弥陀如来を囲んで三尊が並んでいた様は、どれほど優美で華やかだったことでしょう。



境内には青銅製の大日如来様がいらっしゃいました。
空襲の炎に焼かれ、ツギハギだらけの痛々しいお姿を拝していると、戦争の残酷さ、非情さを強く感じました。

2011.4.16

五色園(愛知)・浅野祥雲作品再生プロジェクト

前回まで五色園の紹介をさせていただきましたが、いよいよ修復活動のことを書きたいと思います。
第4回作品再生プロジェクトは4月16日〜17日の2日間にわたって行われました。

今回修復されたのは「月見の宴」と「赤山明神貴婦人解逅」の2場面です。



こちらは「月見の宴」。

ある月見の宴でのこと。
2歳の親鸞聖人は、父君の膝の上で月見を楽しんでいらっしゃいました。
すると聖人は前へ歩み出され、両手を合せ「南無仏」とお唱えになったのです。
周囲の人々は皆、この若君の非凡さに歓喜したのでした…。

真ん中で父君に抱かれているのが親鸞聖人。
とっても可愛らしいですね。



1日目の作業は、ペンキをヘラで剥がすところからスタートです。
なかなか根気のいる作業ですが、ペンキを塗る前の大切な工程。
地道に頑張ります。



こちらはペンキが剥がれた状態です。



この日は顔や手など、肌の部分だけペンキ塗り。
長い時間の風雨にも耐えられるよう、乾いてから二度塗りをします。



綺麗にお化粧できました。

プロジェクト2日目。
前日ヘラで綺麗にした像の髪や着物に、ペンキで色を塗ってゆきます。



私は親鸞聖人の一部分を塗らせていただきました。



まずは黒髪から。



一生懸命に色を塗っていると、何だか親鸞聖人が無性に可愛く思えてきて仕方ありません。
まるで我が子のような愛おしさなのです。



華やかな色が塗られてゆくにつれ、作品が生き生きと輝きだしてきました。



親鸞聖人も綺麗な晴れ着を着て、とっても嬉しそう!



夕方には全てのペンキ塗りが終わりました。
皆さん、実に堂々としたお姿ですね。

ひょんなことから参加することになった、この修復活動。
沢山の方々との出会いにより、とても充実したものになりました。
機会があれば、是非また参加させていただきたいと思います。

2011.4.16〜4.17

五色園(愛知)・浅野祥雲ワンダーランド(5)

今回の修復プロジェクトでは、新たな浅野作品と思われる像が発見されました。
それがこちら。



長年の風雨にさらされて、彩色は剥げ落ち、かなり風化が進んでいるようです。
ひょっとして釈迦苦行像か羅漢像でしょうか…?

広大な五色園には浅野作品が点在しており、普段人が入らない藪の中には、このような未知の像がまだ眠っている可能性が十分あります。
期待に胸が膨らみますね。


さあ、広大な五色園をぐるりとまわり、出口へ近づいてきました。



おや?
美しい桜の下でお花見をしている方々がいらっしゃいます。
「ぜひ私も仲間に入れていただけませんか?」
そう声をかけようと近づいたところ…



なんと僧侶の一団でした。
「信行両座」の場面です。
皆さん深刻な表情ですが、一体どうしたのでしょう?

ある日のこと、法然上人の弟子たちは、「信」(阿弥陀如来への信心のみが大切)と「行」(信心と併せて行を積むことが大切)、どちらの考えを持っているのか席を分けて着席することになりました。
ほとんどの弟子たちは行の座に座りましたが、遅れてきた熊谷蓮生房は信の座に着きます。
すると法然上人は信の座に座り、行を選んだ弟子たちは自らを恥じたのでした。

この「信行両座」は、五色園の中で私が一番好きな場面です。
悩みながら座る弟子たちと駆け込む熊谷蓮生房。
静と動の対比が見事ですよね。

 

私も仲間に入れていただきました(笑)



広大な敷地を持つ五色園。
ブログでご紹介できなかった名場面が他にも沢山あります。
興味を持ってくださった方は、是非五色園まで足を運んでみてください。
ダイナミックで力強い、それでいてどこか温かな作品たちが、優しく迎えてくれますよ。

2011.4.16-4.17

五色園(愛知)・浅野祥雲ワンダーランド(4)



「川越の名号」の場面が見えてきました。

念仏の教えに帰依した小畠左衛門の妻の求めに応じ、「南無阿弥陀仏」の名号を書いて与えた親鸞聖人。
その左衛門の妻が名号を抱き、川越しに聖人を見送る感動的な一幕です。



なんとコンクリートで一枚の紙を表現するという、画期的で高度な技術。
このように斬新な表現方法をかつて見たことがありません。
さすが浅野氏です。
紙に書かれた「南無阿弥陀仏」は、さながら「勝訴!」の文字のように、燦然と光り輝いています。



広大な五色園内には遊具もあり、老若男女が楽しめる公園となっていました。
地元の方のお話では、近所の子供たちの遠足コースにもなっているのだとか。
桜が満開の時期には多くの花見客で賑わうそうです。




こちらは「箱根権現饗応」の場面。
大きな赤い鳥居の下に官主たちが立ち並び、実に壮麗な光景です。



後ろ側にまわってみました。

浅野氏の作品群の魅力の一つは、ただ見るだけでなく、触れたり、作品の間を歩いたりできるところではないかと思います。
そう、私たちは親鸞聖人の物語の中に自ら入りこむことができるのです。

(続く。次回最終回!)

五色園(愛知)・浅野祥雲ワンダーランド(3)



林の中に凛々しい不動明王と二童子がいらっしゃいました。
比較的最近塗り直されたのでしょうか、華やかな色彩が岩壁に映えています。



こちらは美しい弁財天。
水の神様です。




五色園の広大な敷地内には、このようなコンクリート像群が十数か所にわたって配されています。
なんと像の数は総計百体以上。
浅野祥雲研究家である大竹敏之さんに伺ったお話では、これらの像は浅野氏が自宅で造り、五色園まで運んで来たのだそうです。

五色園が完成したのは昭和9年。
今のように車が普及していない時代、浅野氏は馬車か牛車でコンクリート像を運んだ可能性が高いとのことでした。
それは気が遠くなるほど困難な作業だったに違いありません。
彼が2m以上もある像を馬車に乗せ、一体一体大切に運んでいる様子が目に浮かんできます。

正直、五色園を訪れる前までは「面白そうな珍スポット」という印象を持っていた私。
けれども実際に像を目の当たりにすると、浅野氏の計り知れない情熱を感じたのでした。
芸術への探求、深い信仰心が生み出した、奇跡の作品群と言えましょう。



さて「桜ヶ池大蛇入定の由来」の場面が見えてきました。
大蛇の体の一部は地面にめり込んでおり、より一層のスケールを感じさせます。
そして光円阿門梨が乗る水のダイナミックさ…!
水しぶきを立て、うねりながら阿門梨をぐいと押し上げる様は、隣にある本物の池の水よりも水らしい躍動感に溢れています。



せっかくなので、私も大蛇にライディング(笑)。
「まんが日本昔ばなし」のオープニング気分を満喫させていただきました。

(さらに続く)