津市内を出発して北上し、鈴鹿市へ。
鈴鹿サーキットからも程近い、神宮寺を参拝しました。
神宮寺の名の通り、かつては近くにある伊奈冨神社の別当寺として繁栄を極め、境内には七堂伽藍が建ち並んでいたそうです。
数多くの優れた仏像が伝えられていることでも知られており、事前にお願いをして収蔵庫を拝観させていただきました。
こちらは可愛らしい薬師様。
像高81cm、檜材の一木造です。
衣文の彫りは浅く、柔和なお顔立ちであることから、藤原時代の作と推定されています。
ぷっくりとした丸いお顔に、あどけない子供のような表情を浮かべ、拝する者を穏やかな空気に包みこんでくださいます。
そしてこちらは凛々しい二天像。
持国天と多聞天です。
像高はいずれも160cmほど。
一見して一木造とわかる、非常に重厚感あるお姿をなさっています。
古様な彫法が見られることから、先ほどの薬師様より少し古い、平安初期から藤原時代にかけての作と推定されているそうです。
収蔵庫内には、お寺では淳和天皇像と伝えられている、珍しい男神像も安置されていました。
像高71.5cmで一木造、平安後期の作。
かつては神社の別当寺であったという、このお寺の歴史を感じさせる尊像ですね。
お寺の方のご好意で、本堂の仏様もお参りさせていただきました。
こちらは本尊の薬師様。
収蔵庫の仏様たちと比べると、おそらく後の時代の作になると思われますが、個性的なお顔立ちと量感のある体躯が素晴らしい仏様です。
そしてその隣にいらっしゃったのは…
実にユニークな深沙大将でした。
ぐいと前方を睨みつけ、独特のポーズを取る様は、あたかも歌舞伎の見得を切っているかのようです。
胸に髑髏の首飾り、腹には人間の生首を据えているという、非常に恐ろしい異形の姿でありながら、不思議とどこかユーモラスで親しみやすい雰囲気も感じさせました。
そして何より印象的なのが、口にくわえられた一匹の蛇。
腕や足に蛇を絡ませた深沙大将は過去にも何度か拝したことがありますが、このような尊像は初めてです。
昔の人々はこの不思議な尊像を拝した時、どれほどビックリしたことでしょうね。
2012.4.30
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