興善寺(奈良)・慶派の阿弥陀如来

変換~P1020167

頭塔を訪ねた後、自転車で数分のところにある興善寺を参拝しました。

変換~P1020169

奈良公園からも程近い場所にありながら、お寺の周りには観光客はほとんどなく、静かで落ち着いた雰囲気が漂っていました。
一般的にはあまり知られていませんが、興善寺は創建を室町時代にまで遡る古刹で、南都七大寺の1つである元興寺の奥の院をその前身としているそうです。

変換~P1020173

こちらの御本尊は快慶作と伝えられる阿弥陀如来立像。
事前にお願いをして拝観させていただきました。

変換~P1020180

こちらがその阿弥陀様です。
像高約90cm、鎌倉期の作。
いわゆる安阿弥様の三尺阿弥陀で、快慶ないし関連工房で造像されたと推定されています。
お顔は優しげで、こぶりな目鼻立ちが実に可愛らしい阿弥陀様です。
お寺の創建より造像が古いのは、天正7年(1579年)に、奈良市東方の東山田原村にあった寺庵から寄進されたためであるそうです。
また昭和37年には胎内から法然上人の手紙が発見され、新聞などに取り上げられて話題となりました。

お寺の方には色々と親切にしていただき、本当に素晴らしき参拝となりました。
改めて心より御礼申し上げます。

2014.11.7
スポンサーサイト

テーマ : 神社・仏閣巡り - ジャンル : 旅行

頭塔(奈良)・奈良のピラミッド

不空院から自転車で「ならまち」へと向かいました。
ならまち(奈良町)は奈良市街地南部の歴史的町並みが残る地域の通称で、このあたりには昔ながらの町屋が建ち並び、多くの観光客で連日賑わいます。
この「ならまち」の一画に、ピラミッド状の巨大建築物があることをご存じでしょうか。

変換~P1020132

それがこちら、「頭塔」と呼ばれる奈良時代の史跡です。
1辺30m、高さ10mもあり、7段の階段ピラミッド状の構造をしています。
過去にも何度か近くまで行ったことがありましたが、敷地内には入ったことはなく、少し離れた場所から眺めるだけでした。
ちょうどこの時は秋の特別公開中だったため、初めて内部をじっくり見学させていただくことにしました。

変換~P1020165

看板にあった頭塔の復原案です。
全体に瓦が葺かれ、塔の上には相輪が置かれており、巨大な仏舎利塔のようにも見えます。
奈良時代の僧、実忠によって造営されたという記述が古い文献に残っていますが、詳しいことはわかっていません。

変換~P1020138

瓦で覆われた窪みには石仏が安置されており、現在は損壊した箇所も多いものの、建設当初は計44基もあったと推定されています。
摩耗が激しく尊名は不明ですが、如来像および脇侍が彫られているようです。
三尊の手前に、うっすらと飛天も見えます。

変換~P1020157

それにしても、一体なぜこのような巨大建築物が造られたのでしょうか。
何らかの仏教施設であったことは間違いないでしょうが、他に似たような建築物が残っていないため、残念ながら推測の域を出ません。
今回初めて敷地内に入り、間近に石仏や石垣を拝したことで、非常に優れた建築物であることがよくわかりました。
おそらく当時最先端の技術を結集させて造られたのでしょう。
奈良時代の人々は、空高くそびえる塔を目の前にして、さぞ驚嘆したに違いありません。

2014.11.7

続きを読む »

テーマ : 神社・仏閣巡り - ジャンル : 旅行

鳥獣戯画展に行ってきました

東京国立博物館で開催中の「鳥獣戯画─京都 高山寺の至宝─」展に行ってきました。

変換~010ec143480ec92a9606937dc3d4bbb0ba0b3d650e

テレビやネットで話題となっているだけあって会場は大混雑。
お昼過ぎに着いた時には、平成館の入り口に長蛇の列ができていました。
休憩所でしばらく休んでから会場へ向かったものの、それでも一番有名な鳥獣戯画甲巻は更に2~3時間待ち(!)とのことだったので、まずは他の展示を見ることにしました。

変換~item08a (神鹿)

高山寺は私が京都で特に好きなお寺の一つで、国宝「鳥獣戯画」をはじめ、数々の貴重な文化財を有することで知られています。
お寺のある栂尾へは、京都市街から車で北西へ約40分ほど。
あわせて三尾三山と称せられる高雄山神護寺、槇尾山西明寺を過ぎ、清滝川の流れに沿うように進んでゆくと、三寺の中で一番奥に位置する栂尾山高山寺が見えてきます。
お寺は奈良時代の創建と伝えられていますが、一時は荒廃、鎌倉時代の僧・明恵によって再興されました。
明恵上人は厳しい戒律を守り、修行に励みながらも、栂尾の自然や動物を深く愛したそうです。

0139a909ad8a835518ea22259edfa30bff94ef5fbd.jpg (木彫りの狗児)

こちらは有名な子犬の像。
明恵上人の愛玩の犬と伝えられています。

0139e08d1f600e11374cf176f9e2b4bb9a5beb01a0.jpg (明恵上人樹上坐禅像)※前期のみ展示

そして特別展のなかでも最も楽しみにしていたのが、こちらの国宝・明恵上人樹上坐禅像です。
私が初めてこの絵の存在を知ったのはまだ学生の頃でした。
残念ながら書名は失念してしまいましたが、あるとき読んでいた本のなかで、この絵のことが取りあげられ、おおよそ次のような表現で上人が称えられていたのです。
「明恵は類まれな名僧で、自然をこよなく愛した。この絵に描かれた動物たちもまた、彼のことを慕っているかのようだ」

質素な衣をまとい、お穏やかな表情で瞑想する明恵上人。
頭上に小鳥たちが飛び、木の間からはリスが愛くるしい表情で上人を見つめています。
神や仏が宿る大自然の中で人間も動物も共に生きている。
それは大らかで美しい、日本古来の思想、信仰の形でもあるのでしょう。

変換~1_r1_c1
 (⇒高山寺HPはコチラ)

展示を一通り見た後、いよいよ鳥獣戯画拝観の列へ。
甲巻以外の乙丙丁巻はあわせて80分、甲巻だけで90分待ちとのことでしたが、実際はあわせて2時間30分くらいでした。
拝観できたのはほんの一瞬でしたが、ウサギやカエル、猿など、親しみやすい動物たちが、勢いのある筆致で描かれており、その活き活きとした様子を見ると、疲れ果てて棒のようになった足の痛さを忘れました。

**********

ちょうどこの時、本館で平成27年 新指定国宝・重要文化財指定展示が行われていたため、特別展と併せて見てきました。(※現在は終了)
彫刻では新規に醍醐寺・虚空蔵菩薩立像、東大寺・弥勒仏坐像が国宝に指定されて話題になりましたが、私個人としては、京都・新町地蔵保存会蔵の地蔵菩薩坐像(重文)が特に印象的でした。

03-028.jpg (⇒京都市HPはコチラ)

一木造で9世紀頃の作。
さほど大きな像ではありませんが、四角い頭、凛としたお顔立ちで、独特の存在感を漂わせています。
そして何よりも目を引くのは、体を覆う衣のボリュームです。
貞観仏らしい、深くて力強い衣文が密に刻まれ、その複雑な模様が、堂々とした体躯にさらに威厳を与えていました。
帰宅してからネットで調べたところ、最近まで京都市の文化財であったようで、これほどの知られざる仏像が伝わる京都の奥深さに圧倒されたのでした。

2015.5.9

テーマ : 美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル : 学問・文化・芸術

不空院(奈良)・不空羂索観音御開帳

少し前のことになりますが、去年の秋に奈良のお寺巡りをしてきました。

変換~P1020113

久しぶりに訪れたJR奈良駅は、とても近代的なビルへ建て替えられており、駅前の雰囲気も一変していました。
おそらくJR奈良駅を利用するのは6~7年ぶりでしたが、同じ駅とは思えないほどの変貌ぶりです。
見慣れない風景に戸惑いながらも、駅近くでレンタサイクルを借り、奈良公園へと向かいました。

変換~P1020115

そして奈良といえば、やはり鹿ですよね。
奈良公園の鹿は、春日大社の神使として古くから大切にされ、国の天然記念物の指定を受けています。
なんと公園周辺には1,100頭もの鹿が生息しているそうです。
奈良国立博物館で正倉院展を見た後、再びレンタサイクルに乗り、不空院へ向かいました。

変換~P1020117

寺伝によると不空院は創建を奈良時代にまで遡るという古刹で、かの有名な鑑真和上の住坊をその前身としています。
鎌倉時代に入り、僧・円晴が興福寺南円堂を模して八角円堂を建立し、不空羂索観音像を安置しました。

変換~P1020123

以前からずっと御本尊を拝観したいと思っていたものの、なかなかタイミングが合わず、この時行われていた秋季特別公開でやっと念願が叶いました。

変換~P1020120 (看板より)

その伝承のとおり、本尊の不空羂索観音坐像は興福寺南円堂の尊像と雰囲気が似ています。
製作者は不明ですが、興福寺南円堂と同じく、慶派仏師の作である可能性が高いのではないかと思われます。
像高103.9cmで、鎌倉期の作。
高い髻、写実的で力強い像容など、いかにも鎌倉仏らしい特色のある観音様です。
そして何より印象的なのは、やはり額に彫られた第三の瞳でしょう。
お寺の方のお話によると、この不思議な目は「音を観ずる事」の重要性を示しているそうです。

不空羂索観音の作例は全国的にもあまり多くなく、不空院、興福寺南円堂の他に、東大寺法華堂の本尊がよく知られています。
尊名にある「不空」は、「空しからず、人々をもれなく救済する」ことを意味するそうです。
「羂索」は古代インドで猟や戦闘に使われる捕縛用の縄でしたが、仏教においては、御仏がこの縄で人々を救ってくださると考えられ、衆生救済の象徴とされました。

2014.11.7

テーマ : 神社・仏閣巡り - ジャンル : 旅行

倉敷市真備町尾崎地区磨崖仏(岡山)・岸壁の毘沙門天

岡山旅行の最後に、倉敷市真備町尾崎地区の磨崖仏を訪ねました。

変換~P1020016

事前にいくら調べても詳細な住所等がわからなかったため、現地へ行けばなんとかなるだろう、いわば一か八かの気持ちで現地へ向かうことに。
カーナビを頼りに尾崎地区へ入ったところ、毘沙門天像の名を記した案内板を見つけて、ほっと一安心しました。

変換~P1020018

更に車を走らせてゆくと、やがて集落の片隅にある、廃車などが捨て置かれた空き地へとたどり着きました。
ここで本当に大丈夫なのだろうか。
不安になりながら周辺を探していると…

変換~P1020020

あった!
矢印が指し示す先には、空き地の奥へと続く細い道が見えました。

変換~P1020022

ところがこれがかなりの山道で、木々が生い茂り、足元は悪く、なかなか思うように前へ進めません。
暑さと苦しさに息を切らせて登ってゆくと、あちこちから蚊の大群が襲ってきて、なんと全身を20~30か所も刺されてしまいました。
滅多に人が通らないため、格好の獲物だったに違いありません(笑)

変換~P1020027

道はますます細く急こう配になってゆきます。

変換~P1020032

入口から15~20分ほど歩いたところでしょうか、目の前に巨大な岩が現れました。
岩の上に生えた木の根元から、ロープが一本、だらりと垂れさがっています。
ロープは細く、貧弱で、手には取ってみたものの、その頼りなさに不安を感じました。
でも折角ここまで来たのだから引き返す訳にはいかない。
意を決してロープにしがみ付き、岩をよじ登ってゆくと…

変換~P1020034

巨大な毘沙門天像が岸壁に浮かび上がっていたのでした。

変換~P1020040

像高1.8m、室町末期の作。
左手に毘沙門天の象徴である宝塔を掲げ、足元には邪鬼を踏んでおり、非常に凛々しいお顔立ちです。
もともとの彩色かどうかは不明ですが、体の所々に朱色が残っています。
それにしても一体誰が、何故、このような場所に毘沙門天像を彫ったのでしょうか。

変換~P1020048

ふと後ろを振り返ると、山々に囲まれた田園地帯、その間に点在する集落が見えました。
磨崖仏がある山塊は、かつて鳥ヶ岳城のあった石田山と峰続きとなっているため、この高台の場所は城の見張り台として使われていたと考えられているそうです。
岸壁の毘沙門天様は、恐ろしい敵から集落を守ってくれる大切な武神であったのでしょう。

2014.9.25

テーマ : 神社・仏閣巡り - ジャンル : 旅行

安養寺(岡山)・毘沙門天の里

阿智神社参拝のあと、倉敷市内をレンタカーで北上しました。

変換~P1020011

やがて見えてきたのは、収穫を間近に控えた田園地帯です。
抜けるような青空に、深い緑の山々、黄金色に輝く稲穂がよく映えています。

変換~P1010991

車を停めて田圃の中を進んでゆくと、倉敷屈指の古刹・安養寺の鐘楼が現れました。
こちらの梵鐘はなんと重さが約11tもあり、中国・四国地方でも一番大きいそうです。

変換~P1010981

おや?
梵鐘の奥に巨大な銅像が見えます。
近づいてみると…

変換~P1010984

どーーーん!!
大きな大きな毘沙門天様でした。
私の貧弱なデジカメでは迫力を伝えられないのが残念ですが、とにかく大きい!
かつてこれほどまでに巨大な毘沙門天像を拝したことがありません。
しかも境内へは、この毘沙門天像の下をくぐって入れるようになっています。

変換~P1020001

神仏習合の名残りのためか、本堂には注連縄が飾られていました。

変換~P1020003

そして安養寺で特に有名なのが、こちらの成願堂に安置されている毘沙門天像です。
(⇒安養寺のHPに堂内の写真が載っています)
堂内に足を踏み入れた瞬間、その迫力に鳥肌が立ちました。
なんとこちらのお堂には三十六体もの等身大の毘沙門天像がずらりと安置されていたのでした。

変換~bisyamon1_l (⇒倉敷市のHPより)

中でも中央の毘沙門天立像は平安時代の作と推定され、国の重要文化財の指定を受けています。
像高約205cmで檜材の一木造。
写真ではわかりにくいのですが、地天女の上に立つ兜跋毘沙門天です。

ひとつの寺にこれほど多数の毘沙門天像が伝わっている例は全国的にも非常に珍しいため、毘沙門天を集中的に祀る特殊な信仰があったと考えられています。
毘沙門天は北を守る神様であることから、倉敷の北に位置するこの場所は、古くから大切な場所だったのでしょう。

変換~P1010993

2014.9.25

テーマ : 神社・仏閣巡り - ジャンル : 旅行